【映画】『 タイムマシン 』感想~知能低下版タイムマシン(原作比)

【映画】『 タイムマシン 』感想~知能低下版タイムマシン(原作比)
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タイムマシン

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タイムマシン 作品概要

2002年 アメリカ
原題:The Time Machine
監督:サイモン・ウェルズ
キャスト:
ガイ・ピアース
ジェレミー・アイアンズ
シエンナ・ギロリー

あらすじ

H・G・ウェルズの古典SFをVFX満載で映画化したスペクタクルアドベンチャー。殺された婚約者を取り戻そうとタイムマシンを作った天才科学者は、80万年後の未来へ。
(WOWOWより引用)

原作↓

【本】『 タイム・マシン 』感想~人類が幾世代にも渡って最適化した、その先へ。

原作を読んでから映像作品を観るという行為は、ディズニー作品以外では初めての経験に近いはずなので新鮮だった。
原作と違うから云々、とこき下ろすやり方は好きでないのだが、良い機会(?)なので、やり過ぎない程度にこれをやることにする。

感想(ネタバレなし)

細かい所を見ればよく出来ている点もあるのだが、ストーリーの根幹部分がやっつけ仕事なせいで残念な出来となっている作品だった。

時間移動の表現は素晴らしい

タイムマシンで未来へ行くところの再現度は素晴らしい。
主人公から見える景色がそのまま早送りされていくイメージで、現代の街が近未来な街に、またそれが80万年後までに荒れ果てて自然の大きなうねりに変わるところなど、細かな描写でかつ迫力がある。
タイムマシン自体も、計器類や取り外し可能なレバーの作り込みなど、原作通りによく出来ていた。
またタイムマシンの加速に伴い、太陽が高速に動く球から帯状に見えるようになり、その帯が季節の表現として左右に動くところも「そう、これこれ!」という感じである。
(途中から視点がどんどん上空へ移動し、地球全体を見下ろすようなところまで行ったのはやりすぎ感があるが、映像表現として十分にアリだ)

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諦めの早い主人公

この映画には原作に無い要素として、主人公に婚約者が居る。
あらすじに記載の通り、主人公は婚約者を死から救うためにタイムマシンを開発する。
彼はいったん過去に戻るのだが、婚約者の死は避けられないという結果に終わる。
ただし、この救出作戦の試行回数は1度だけで、何度も試して上手くいかないという手順は踏んでいない。
にもかかわらず「1000回やっても同じだ。過去に答えはない。そうだ、未来に行こう」と言って未来へ舵をきってしまう。
タイムトラベルものに慣れている視聴者は「結果は収束するもんねぇ」と察してくれるが、そうでない視聴者にとっては行動が早急過ぎると映るだろう。

キレやすいタイプの主人公

タイムトラベルで婚約者を救えない理由は物語終盤で説明される。
内容自体は映画の範囲内での答え合わせとして十分なものだが、これに対して主人公が行った仕打ちが逆ギレ以外の何物でもなく、教えてくれた相手が可哀相である。
その直後には更にエネルギーの大きいキレっぷりを見せて趨勢を何とかしてしまうのだが、どう考えても地球規模に広がっているはずの問題がそれで解決する訳がない。
科学者とは思えない思慮の浅さに閉口しているうちに、物語は終わりに向かっていく。

80万年後の未来は舞台として必要だったか

80万年後の未来については、原作の要素を残しつつも映画なりのリビルドを施して描かれる。
地下生物の存在も含めて描かれるが、そもそもこの時代の描写に数十分の尺を割くことが、本作品に必要かというと疑問だ。
先に述べた通り、物語の主目的は主人公の婚約者を救うことにあるが、80万年後に繰り広げられるイベントの9割方は、この目的に何ら関係がない。
下手に未来の民族との交流を深掘りせずにサクッと答え合わせの所まで行ってしまえば、残りの尺をもっと有効で筋の通った展開に使えただろうと思う。

ちゃんと料理出来たところと出来ていないところの差が激しい

原作通りの要素と、映画オリジナルの要素を中途半端に詰め込み過ぎた結果、筋が通っておらず強引な作りの映画になってしまった。
もう少し扱う要素の的を絞ってスリムな作品にすれば、もっとまとまりの良いものになったはずだ。

感想(ネタバレあり)





映画作品内の要素について

2030年から80万年後まで残っていた、図書館の人工知能くんは味があって良い。
無駄に感情豊かなところが面白いし、エンディングでも彼なりの居場所を見つけられて良かった。
彼の存在は、学問の再開発をする必要がないという点で、新人類の発展を大いに助けることだろう。

2030年から未来へ行く途中に起こった月の落下事件は、ほんの短い尺だがインパクトがあって良かった。
やろうと思えば、このイベントだけで1本映画が作れるだろう。
もっと観たいと思わせながら物語は未来へと加速していくが、この映画の中では丁度いい塩梅の描き方だったと思う。

クライマックスのタイムマシン爆破作戦はネタバレ無しのセクションでも書いた通り思慮浅いと言わざるを得ない。
頭脳派モーロックが「有能な地上人類は別のコロニーで繁殖用に使うんだよねー」って言ってたのに、それが爆発の及ばない別の場所にあるとは考えなかったのだろうか。
この場合「他にもモーロックの拠点はたくさんある。俺たちの戦いはこれからだ!」ENDにするか、タイムマシン爆破はせずに過去に戻って、問題の根っこから何とかするかだ。
後者はせっかく親しくなった地上人類の存在を無かったことにしてしまうし、何より尺の都合があわないので、前者の「戦いはこれからだ」ENDが適解となろうか。

原作と比べて

未来の人類は二種に分かれて進化したのだという説明は図書館の人工知能くんと頭脳派モーロックから成されるし、両人類の捕食者・被捕食者という関係も原作通りだ。
しかし、ここに至る要因として原作で説明された階級社会の存在は、映画作品中では進化の理由とされない。
原作での説明は搾取する側・される側に分かれた社会構造への皮肉たっぷりで面白かったし、映画作品にこれを組み込んだら知的な雰囲気になって良かったのではと思うのだが。
(さっきは褒めたけど、映画オリジナルで人類二分化の理由として使われた月落下イベントが余計だった?)

また、その人類二分化と80万年後の状況や、婚約者を救えない理由についてまとめて教えてくれた頭脳派モーロックの存在もよくない。
原作の魅力は、未来の世界を歩くなかで得られた情報から解釈し、80万年の間に人類に何が起こったのか予想しながら答えを導いていくところだった。
映画の主人公はそういった能動的な思考をせず、声をかけてくれた頭の良いモーロックに全部教えてもらう受動的な姿勢なので、ここでも魅力が損なわれている。
能動的な思考をやるとモノローグ盛りだくさんになってしまいがちで、アニメ「STEINS;GATE(シュタインズゲート)」ではそれでも不自然でなかったが、実写映画では不自然になって難しいのかもしれない。


そういえば、本作と同様にH・G・ウェルズ版「タイム・マシン」を原作として再映画化の話が進んでいるようだ。
(映画.com「ディカプリオ&アンディ・ムスキエティ監督「タイムマシン」を再映画化」)
今回紹介した2002年版映画のような知能低下起こしまくりプロットは、たぶん今どき通らないと思うので、重厚な作品づくりに期待したい。

以上。
ほな、また。

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