【映画】『 チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~ 』感想~観ても想像は超えてこないが、大火傷もしない【レビュー】

【映画】『 チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~ 』感想~観ても想像は超えてこないが、大火傷もしない【レビュー】
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チア ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~
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総評

評価:

ただでさえ展開も結末もお約束通りになりがちな青春映画のなかにあって、有名な実話ベースとはいえご丁寧にもサブタイトルで高精度なネタバレをかましている潔さにはわらう。
中身もタイトルから期待される通りの内容と水準を満たしており、観客にとっては絶対に想像は超えてこないけれども、絶対に大火傷もしない安心感に溢れた出来となっている。

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感想

みんなが観たい綺麗なものだけ集めたホントの話

女子高生たちが劇中で流す汗と涙は、闇の成分をほとんど含まない純真で綺麗なものだ。
女子が集まれば当然のように起こるとされている派閥争いや異性の取り合い、嫉妬ベースのいがみ合いなど、醜さレベルの高い争いはあまり描かれない。
人でなし要素は、如何にも性根の悪そうな1人のみが背負ってわかりやすく皆の敵として映るだけだ。
鬼顧問教師による指導も、ぬるめの仕上げとなっている。
(同じ役者が随分前に冷酷な女教師を演じたドラマ「女王の教室」の方がよっぽど鬼度合いが高かった)

これらの温度感を見れば、本作は女子集団の中で繰り広げられる青春スポ根要素のうち、見栄えの良い上澄みの部分だけ掬い取って作られた映画といえる。

しかしそれは、本作において何ら問題ではなかろう
観客がキラッキラの目映いポスターと柔らかさ全開のタイトルを見て本作に期待するのは概ね、元気の良い女の子達が適度にぶつかり合いながらも前を向いて団結し、栄光を勝ち取る物語だろうからだ。
ここにあまりに闇の深いイジメや絶叫、鬱要素が入ってくるとノイズにしかなり得ないし、あんまり酷いと当事者を罰してスカッと展開を入れる手間も増えてしまう。

勝ちにこだわる部活動を経験した女史の皆様は「こんなんリアルじゃない」と宣うのであろうが、たぶん彼女たちは本作の想定するお客様では無いのだろうと思う。
あるいは、彼女たちが持つ部活動の思い出を、辛くて泥まみれのそれではなく、皆で足並みを揃えてひとつの目標に突き進んだ良き思い出として美化する一助となる効果も、本作にはあるかもしれない。

創部から全米大会まで、3年間のよくばりセットを描ききったバランス感覚

主人公集団たるチア部に立ちはだかる壁は、部員同士ならびに顧問教師との衝突・すれ違いが主となる。
劇中では、当人たちの関係が破綻したシーンの直後に数ヶ月飛んで次の展開へ続くため、「そんな関係のまま、何ヶ月も続けて練習してたのか」との印象を受けるシーンは多い。
しかしそれを差し引いても、1本の映画でチア部創立から3年間、クライマックスとなる全米大会の尺もたっぷりめに盛り込んで描ききったバランス感覚は賞賛に値すると思う。

基本的には広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜の「一般的にも顔が分かり良い」3人を主軸として捉え、彼女たちがチア部という集団の人間関係や思いを代表する形で絆を強めていく。
サブメンバーとして動けるデブ(褒)や媚びアイドル系ウザキャラ、2年次以降の後輩たちが、欲しい時に欲しいレベルで前に出る
彼らの画面への出入りはキレが良く、欲張り過ぎずに勇気をもって程よく見捨てられているのが良い。
主要3人が苦しいならチア部全体が苦しいし、3人がハッピーならそれもまた然りなのだ。

ダンスシーンの大幅オミットは賛否分かれるところ

気になるダンスシーンは、クライマックスに重心を置いて(そこに至るまでのダンスはほぼ捨てて)、力量不足を演出の熱量で押し切る解が採られている。
地方大会から全米大会まで通算数十分を費やしてハイレベルに踊り狂うのは最初から期待していない本作の主題ではないのだと思う(それが出来るに越したことはないが)ので、地方大会から日本全国大会までのダンスが大幅オミットされるのは、個人的には許容範囲だ。
大舞台のダンスにしても、毎日練習出来る女子高生と違って各自仕事を多数抱えた勢いある若手女優を使うのだから、少々甘いクオリティでも仕方ない雰囲気は事実としてあるだろう。
だがそれを踏まえても「よくここまで仕上げたな」と思える出来であったし、これを料理する演出も十分に仕事をしていた。
少なくとも、この程度でハッピーエンドかよ、とはならない水準には仕上がっている。

当然、もっとレベルの高いダンスを、回を経る毎に成長を実感出来る緻密な出来映えで提供出来ていたならば、本作が日本の映画史に残るスポ根チアダン映画になれたであろうことは言うまでも無い。
しかし、和洋多くの作品がそうなれないのと同じように、大人の事情を観客に思い出させて妥協させながら、「まぁまぁ良かったよね」に甘んじざるを得ないのが、本作が着地したポジションだ。

後片付け

汚いものを極力排除し、綺麗なものをさらに正確な取捨選択とエネルギー配分でもって実現された、歪さ(いびつさ)を感じさせない物語はノーストレスで快適だ。
ただし、やはり毎分毎秒、観客の想像に沿いながらも超えてこない点で、名作にはなり得ない残念さもある。

マクドナルドのハンバーガーのように、贅沢は言わないから手軽で美味しいものが欲しい時に、ブレの無い期待通りの味が返ってくる安心感こそ、本作の魅力といえるだろう。

以上。
ほな、また。

チア ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~ 作品概要

2017年 日本
監督:河合勇人
キャスト:
広瀬すず
中条あやみ
山崎紘菜
天海祐希

ごく普通の女子高生たちによるチアリーダー部が、全米チアダンス選手権大会で優勝を果たした福井県立福井商業高校の実話を、広瀬すず、中条あやみ、天海祐希らの出演で映画化。高校に入学した友永ひかりは、中学からの同級生の孝介を応援したいという軽い気持ちでチアダンス部に入部する。そんなひかりを待ち受けていたのは、顧問の早乙女薫子によるスパルタ指導。おでこ出しは絶対必須、恋愛は禁止という厳しく部員たちを指導する早乙女は全米大会制覇を目標に掲げていた。早乙女の指導に周りの部員たちが次々と退部していく中、チームメイトである彩乃とともに、チアダンスを続けていく決意をしたひかりは、仲間たち、そして早乙女とともに大きな目標に向かってまい進する。
映画.comより引用)

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