評価
感想
公開から約30年経った今でも恐竜の表現はちゃんと観るに堪えますね。大したもんです。
恐竜以外はしっかりロケをやって、あまりCGでごまかしていない(ように見える)ね。したがって本物感でいえば、近年よく見るような背景から下手すりゃ床までCGみたいな作品より良質かもしれない。
肝心の恐竜も、アニマトロニクスというのかな、要はアップになるところや人と一緒に映るところは実物の動く模型を使って、遠景などスケール的にどうしようもないところだけCGに頼っているので、抑えるところはきっちり抑えてあるね。模型の造形も動きもよく出来すぎてて、肉迫されると普通にコワいんだわ。
ところで映像表現は見事なんだけど、シナリオ上は「ことが起こる」まで丸1時間かかるので、知的好奇心だけで保たせるには長いかな。
知名度のあるティラノサウルス1や危険性の少ない草食恐竜類は細かい説明を省きつつ、後で活躍させるヴェロキラプトルのヤバさをしつこめに語って、その合間合間に「人間が自然を制御しようとするなんて!」云々の口喧嘩。
あとはこれらを挟みながら恐竜パークへの出発と園内オリエンテーション。シーンとして無駄なものは無かったように思うけど、何かやったり言ったりするまでの事前描画が、いちいち5~10秒長いのかもしれない。
まるで恐竜の気配がしないオリエンテーションに向かって、性格の悪そうなおっちゃんが「これって恐竜ツアーなんだよな?」とか言ってるの、わざとでしょ。たぶん作ってる側も「前半ダルいよなーもうちょっと何とかならんかな」とか思ってたよ。知らんけど。
最初の恐怖シークエンスでお釣り返ってくるぐらい楽しめるのは事実なんだけど、そこからノンストップかというと、そうでもないからね。
この手のパニック映画にありがちな、無能ムーブで人がどんどん死んでいく要素は、それなりの人数ながらもしつこくなくて、とてもよい。ストレス溜まらない。
あと普通のパニック映画と違うのは、主要人物がみな恐竜を研究対象として知っていて、また愛している点だね。肉食竜に追われている間はそれどころじゃないけど、安全なところでひと息ついて草食竜と触れ合ったり、傷ついた個体と向き合うときには、そういうバックボーンが出てくる。
恐竜は恐怖とリベンジの対象でしかないモンスターではなくて、相手は人間の都合で現世に蘇らされた被害者であって、共生の可能性もあるのかもしれないよ、と見せてくるのは、ここからシリーズを通しての宿題になっていくんですよね。
序盤から示される結論は「恐竜はさすがに手に負えないよね」ではあるんだけど、そもそも動物に対する人間の向き合いというのは、恐怖心と可愛がり・リスペクトが混在した、微妙な距離感ではあるんだよな。
動物園の動物や家畜、その他商業動物について、人間はそういう根源的なところにちゃんと向き合っているの?的な話は、迂闊にやると怒られるのでここではやらないけど、本作の恐竜との邂逅から繋げて考えてみると面白いと思う。古代の生物を遺伝子操作で蘇らせた例は知らないけど、品種改良は穀物や愛玩動物で盛んにやってきたのだし。
あ、議論するのはかまわないけど、そこで得た結論を基に他人様に迷惑をかけたり暴言を吐きかけるような過激な運動は、控えような。○ーシェパードとか、グレ○ちゃんとか、ほら、、、
話が逸れたけれど、全体を通して人から恐竜への畏怖や無力感が前提になっていて、襲われても無闇に恐竜を殺そうとしない(そういう選択肢がない)パニック映画というのは、人間側の採り得る主要な選択肢が1つ減る意味で、より困難さが演出されるね。もちろん、人間を脇に置いて恐竜同士の迫力ある戦いで命のやりとりをする分には、制作側も視聴者も歓迎するところ。
ちなみに、制作時期がダイ・ハード3より前なせいか、チョイ役にめっちゃ気合い入れて参加しているサミュエル・L・ジャクソンも観られてお得。古い映画の醍醐味だね。
ここから2022年時点で計6作品 + スピンオフアニメ?を擁するシリーズに育っていくけど、単体で観てもしっかり完結していて良質な映画ではありました。
以上。
ほな、また。
画像引用元:Amazon
- 公開当時のティラノサウルスについて、知名度がどんなもんだったかは知りません、すんません。同サウルスは劇中でも説明不要感が出まくっていたので、てっきり。 ↩
コメント
[…] まぁそりゃ続編は作られるよな。前作で酷い目に遭った主人公のひとりが、「舐めてかかっている」連中と一緒に現地へ戻る羽目になる。続きもの2作目としては王道やね(ほんまかいな) […]