【映画】『 スリーピング ビューティー 禁断の悦び 』 感想〜おじいちゃんに若い娘を自由にさせてみた

映画

スリーピング ビューティー

ポスター

作品概要

スリーピング ビューティー
2011年 オーストラリア
原題:Sleeping Beauty
監督・脚本:ジュリア・リー
キャスト:エミリー・ブラウニング ほか
字幕翻訳:松市譲二

感想(ネタバレ無し)

エミリー・ブラウニング演じる女子大生が、ちょっとアブノーマルなエロ系のお仕事をするお話。
話がさっぱりわからないけど、雰囲気だけは悪くない。
川端康成の「眠れる美女」を原作としているようだが、その本は私自身存じ上げないので、それに絡めたコメントは控えさせていただく。

誰も悦ばないエロス

女性が裸体を披露し、それを前面に押し出していくシーンというのは2種類ある。
1つは、性的欲求を全力で満たしにかかってくる、下品で下劣なAVに近いようなもの。
もう1つは、純文学的・芸術的にエロスを用いた、お上品な方。
この映画はどちらかというと、というか全力で後者の方に振っており、いやらしいエロさはほとんど無い。

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主演女優のエミリー・ブラウニングさんもアンダーヘアまでオープンにする脱ぎっぷりだが、まるで人形か何かを見せられているような映し方。
鑑賞者の男性機能もまったく反応しないわけではないが「ええなぁエロいなぁ、ぐへへへ」なんて気分にはならない。
したがって、如何にもエロそうなタイトルだからといって、エロ目的で観ようとするのはオススメしない。
邦題に「禁断の悦び」なんてついているが、誰も悦んでないし。
そっちの目的なら黙ってAV観よう。

説明不足の極み

そんなお上品なエロ映画であるこの作品が、エロスを用いてどんなことを描いたのか。
これがなかなかどうして、非常に伝わりにくい内容となっている。
主人公の行動理由や感情について説明・描写不足過ぎて、感情移入する隙間がどこにも見当たらないのだ。

何故、アブノーマルな風俗系のお仕事に精を出しているのか。
何故、プライベートの時間に会ったばかりのオッサンに悦んで股を開いているのか。
何故、ちょっと病み気味の男性(彼氏?)と一緒に居るのか、どういう関係なのか。
(しかもこの男性とはセックスしていない)
他にも、映像の中で繰り広げられている行為それぞれに何の意味や背景があるのか。

そういったことの説明が、映像からもセリフからもまったくと言っていいほど為されない。
そのため「何なの、この子??」という感覚のまま、上映終了まで行ってしまう。
「1から10まで全部明示しろ」とか、「何を言いたいのかさっぱりわからない、糞映画」と一言で済ませるような乱暴な感想は言わないが、あまりにも観客に解釈の材料を与え無さすぎではないかと思う。
作り手側の方が「1から10まで全部自分で推測して解釈しろ!」という姿勢なので、わけがわからなさ過ぎて居心地が悪くなってくる。
解釈に任せるなら、せめて1から5ぐらいまでの説明は欲しい。

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男達が老いるまでに得たもの。失ったもの。

一応、途中で出てくる3人の老人については、それなりにストーリーを感じ取ることが出来る。
地位も金もあるが老いてしまった今、どうしても欲しいものが手に入れられない。
そこで、それが手に入れられそうな所(主人公の居る風俗)へやってくる。
しかし「老い」はここで老人たちに、より直接的な形で現実を突きつける。
それにより、老人たちは大きな喪失感を味わうことになる。
ネタバレを控えているためにフワフワした書き方になったが、
この部分はちゃんと描きたいものが伝わってきて、作品として楽しむことが出来る部分だと思う。
「地位や金よりも大事なものがある!」というのではなくて、老いた男たちの悲哀をただ淡々と描いている、という感じ。

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居心地の悪さが魅力?

さて、説明不足に溢れたこの映画の魅力を挙げるとすれば、それは説明不足から生まれる居心地の悪さ自体かもしれない。
主人公の裸体が醸し出す抜群の透明感と、彼女が一方でいわゆる「ビッチ」的な性質を持っている事実から生まれる違和感。

その他、説明不足により生まれる「わからない」の数々。
長回しと暗転等を駆使した不思議なリズム感の中で、それらの「居心地の悪さ」が、逆に心地よくなったりする場合もあるのかもしれない。
私はそういう気分にはなれなかったが、上手くアートな気分になれたならば、そういった感覚が味わえるような気がする。

ラストシーンなど、色々と唐突過ぎてわけがわからない上に、本来なら種明かしになるべき映像がさらに混乱を招くものとなっている。
なので「なにこれわかんないよぉぉぉでもこのわからなさがぎもぢいいぃぃぃぃぃ」となるような、アーティスティックでちょっぴりMな方にはオススメする。
そうでない人はやめておこう。

以上。
ほな、また。

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