【映画】『 スノー・ロワイヤル 』感想~まったく話が噛み合わない復讐の連鎖が始まる!!

映画

スノー・ロワイヤル

coldpursuit

スノー・ロワイヤル 作品概要

2019年 アメリカ
原題:Cold Pursuit
監督:ハンス・ペテル・モランド
キャスト:
リーアム・ニーソン
トム・ベイトマン
トム・ジャクソン
エミー・ロッサム

息子をマフィアに殺された男は、闇のキャリアで身に付けた特殊なスキル…ではなく、除雪キャリアで身に付けた土地勘と体力、そして除雪車で敵を始末していく。しかし勘違いが勘違いを呼び、2つのマフィアと警察を巻き込みながら、もはや収拾のつかない四つ巴の戦いへと発展していく。
公式サイトより引用)

総評

評価:

ちょっとした勘違いと間の悪さで、リーアムの関知しないところでやたらに人が死んで風呂敷が広がり、戦いへの参加人数が増えていくのには笑う。
(いつものリーアム・ニーソンによる痛快アクション復讐劇ではないので注意)

ストーリーといい、各人のキャラ付けといい、場面転換の鮮やかさといい、よくこだわって作られているのが伝わってくる。
ただどうにも地味で視覚的な見せ場に乏しいのと、重心が見えず摑みどころの無い話が続くので、鑑賞には少々体力と気力を要する。
「んークソだなぁこれ……フフッ」と、駄作のハンコを押すギリギリのところで妙に笑わされるのが、悔しいけど最後まで観られてしまうポイントだ。

何だか不思議で貴重なものを観られた気になる映画なので、時間があればどうぞ。

感想(ネタバレ無し)

面白くない、とまでは言えない不思議なバランス

この作品に流れる空気感を表現するのは難しい。
過去の作品を持ち出して良いなら、キャストの地味な『パルプ・フィクション』、気温をめっちゃ下げて刃物と下ネタとメキシコ感をオミットした『マチェーテ』あたりで想像してもらえるだろうか。
ちょっとした勘違いや間の悪さが連鎖して悲劇的な展開に転がり落ちていく様は、シェイクスピアの『ハムレット』にも近い。

作りとして、万人にバッチリウケやすい最大公約数を狙っていないのは明らかだが、かといって何処をターゲットとしているかも不明瞭でモヤモヤする。
どう見ても見せ場でないところにめっちゃ気合いが入っていて、観ているこちらが困惑することも多かった。

けれども、明らかに面白くない感を醸し出しつつも、数分に1度は何らかの形でちょっぴり満足させてくれる。
なんだか悔しいが、その時々の笑いと「この話がどう着地するのか観たい」好奇心だけで、最後まで観られてしまうのだ。

超アンバランスなのに、ギリギリのところでバランスの良さを発揮して客を逃がさない、不思議な作りの映画だ。

主人公はパンドラの箱を開ける役目を負った、真面目で微力なオジさん

リーアム・ニーソン演じる主人公は、元警官だとか諜報員といった、いつものリーアム映画にみられる大層な肩書きを持っていない。
雪に閉ざされた田舎町で、ひたすら同じ道を除雪し続けてきただけの、一般のオジさんだ。

彼の役割は、リーアムが公式サイトのインタビューで答えている通り「パンドラの箱」を開けることにある。

私が演じるネルズは復讐に出るが、ことの重大さに気づいていない。息子を殺したたった1人の男を追うつもりが、事態は復讐とバイオレンス渦巻くとてつもない状況にエスカレートしていく。
公式サイト リーアム・ニーソンインタビューより)

それでも、彼は戦いに何度か絶妙なタイミングで参加しては、さらに話をおかしな方向に持っていく爆弾を投下していく。
「ややこしくなるから余計なことしないで座ってて!!」と言いたいところだが、本人にも悪気は無く、彼も息子の復讐をしたい一心でやっていることなので、悔しいけど応援してしまうのだ。
『96時間』シリーズほどの強さは見せないが、本作の彼も愛すべき復讐の鬼であることは間違いない。

余談だが物語の序盤、主人公は長年にわたる除雪作業を讃えられて、模範市民賞を受賞する。
この際のスピーチが、シンプルながらも毎日働いて生きる労働の民にはグッとくる。
2回も本作を観る機会があるかわからないので、以下にメモ書いておきたい。

When you drive the same road day after day, it’s easy to start thinking about the road not taken.
I try not to do that.
I was lucky, I picked a good road early and I stayed on it.

人は毎日同じ道を運転していると、選ばなかった道のことを考えるようになるものだ。
私はそうしないように務めている。幸運なことに、私は良い道を早くに選び、そこに留まり続けているのだ。
(劇中シーンより、筆者訳)

キャラクター性豊かなマフィア達

本作のマフィア達は、なんだか生き生きしている
ボスの息子と一緒にミルクをこぼしながらシリアルを貪る奴も居れば、怒ってるボスにいちいちイラっとするような口答えをする奴も居る。
全部書いていくと面白みが薄れるので省くが、彼らはただの背景・壁・的としての「ボスの部下」にとどまらない
皆、それぞれ人生とこだわりと好みをもった、1人の人間として愛らしく描かれているのが面白い。
そんなことをやっているから話の重心がブレて何をやりたいんだかわからなくなる、という指摘はごもっともだ)

また、そんな風に丁寧に描かれたマフィア達が死ぬ度に、フルネームと通り名がスクリーンに表示される。
その瞬間の「いっちょあがり」とでも言うような、電子レンジがチン!と音を立てるような小気味よさが絶妙でわらう。


後片付け

何回か「悔しいけど」と書いている通り、正直面白くないような気がするのに、止めるに止められない不思議なスピード感と演出の効いた作品だ。
他作品のような、鬼の形相で敵をシバいていくリーアム親父に飽きてきたら、どうぞ。

以上。
ほな、また。

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