【映画】『 太陽の蓋 』感想~物腰は静かで地味だが、福島原発事故当時の全体像を復習するには最適

【映画】『 太陽の蓋 』感想~物腰は静かで地味だが、福島原発事故当時の全体像を復習するには最適
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太陽の蓋

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太陽の蓋 作品概要

2016年 日本
監督:佐藤太
キャスト:
北村有起哉
袴田吉彦
中村ゆり
三田村邦彦

巨大地震と津波、そして福島一原子力発電所の事故をもたらした東日本大震災が起きた3月11日からの5日間を、原発事故の真相を追う新聞記者を中心に、当時の政権や官邸内部、東京や福島で暮らす市井の人の姿を対比させて描いた。2011年3月11日午後2時46分。東日本大震災が発生し、福島第一原発は全電源喪失という事態に陥った。冷却装置を失った原子炉は温度が上がり続け、チェルノブイリに匹敵する最悪の事態が迫っていた。想定外の状況と情報不足で官邸は混乱を極め、市民たちは故郷から避難を余儀なくされていく。震災当時の菅内閣の政治家を全て実名で登場させ、当時の状況をリアルに再現する。
映画.comより引用)

感想

評価:

福島第一原発事故当時の状況を、様々な立ち位置から総復習

見た目にも展開にも華があるタイプの映画ではないが、東日本大震災当時に福島第一原発事故を取り巻いていた日本の状況を、俯瞰的に復習するにはもってこいの作品だ
作中では刻々と状況が悪化していく原発事故に対して、官邸サイドで起こっていた混乱と奮闘が描かれる。併せて新聞記者・原発関係者・子を持つ母親など、様々な立ち位置から代表的な属性をも主人公として拾い上げ、各々の苦境や心の揺れ動きを無理なく物語に組み込んでいる点が、バランスの良いポイント。
事実に基づいたフィクションと前置きしながらも、総理大臣以下、政府側の登場人物は実名での登場となっている。誰もが思い出すような名言・迷言(「直ちに影響はない」など)は出てこないが、官邸の人間が実名であることは、観客が持つ実際の記憶との一致度合いを上げる形でリアリティ向上に寄与しているのは確かだ。

放射能を巡る不安の拡大に焦点。薄味だが原発是非にも触れられる

本作から数年遅れて公開された「Fukushima 50」は原発内部、現場サイドの壮絶な戦いをヒロイックに描いていたが、この「太陽の蓋」は幾分ドライで、あまり原発事故現場には寄り添わない。その代わりに本作では、原発から漏れ出る放射性物質の影響や、メルトダウンに絡む不安・混乱などにフォーカスを当てている。このあたりは「Fukushima 50」よりも本作の方が、当時大多数の一般市民が報道で目にしていた景色に近い。基本的には当時報道・想定されていた内容の復習の域を出ないが、そういった記憶も風化していく中で、世代を跨いだ教材としても活用し得る情報量は備えている。加えて原発自体の是非についても、結論をボカした匂わせ程度ではあるが触れられている。
「Why 原発?」に絡む話は本作で描かれた東日本大震災の情報だけでなく、近年話題となった福井県高浜原発に絡む関西電力 – 高浜町元助役の金品授受問題も併せて履修しておくと、色々と闇の深い背景が見えてくるように思う。

先にも述べた原発内部中心の「Fukushima 50」や、頭カラっぽスリラーの皮を被って原発の後ろめたい部分を突きつけた「天空の蜂」などと併せて鑑賞すると、事故や原発の全体像と現場の壮絶さを共に理解出来てバランスが良い。

以上。
ほな、また。

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