評価
感想
福島第一原発事故当時の状況を、様々な立ち位置から総復習
見た目にも展開にも華があるタイプの映画ではないけど、東日本大震災当時に福島第一原発事故を取り巻いていた日本の状況を俯瞰的に復習するには、もってこいの作品だと思う。
原発事故に際して官邸で起こっていた混乱と奮闘が描かれるのと併せて、新聞記者・原発関係者・子を持つ母親など、様々な立ち位置の属性をも主人公として拾い上げて各々の苦境・心境を描く欲張りセットが展開される。でもわりとバランスがよくて、詰め込みすぎ感はあまり感じない。
事実に基づいたフィクションと前置きしながらも、総理大臣以下、政府側の登場人物は実名になってるの良いね。誰もが思い出すような名言・迷言(「直ちに影響はない」とか)は出てこないけど、官邸の人間が実名であることは、観客が持つ当時の記憶との一致度合いを上げる形でリアリティ向上に寄与してる。何処からも怒られなかったのかな?これ。
放射能を巡る不安の拡大に焦点。薄味だが原発是非にも触れられる
本作から数年遅れて公開された「Fukushima 50」は原発内部、現場サイドの壮絶な戦いをヒロイックに描いていたけど、この「太陽の蓋」は幾分ドライで、あまり原発事故現場には寄り添わない。
その代わりに、原発から漏れ出る放射性物質の影響や、メルトダウンに絡む不安といった、原発の外で巻き起こるものごとにフォーカスを当てている。このあたりは「Fukushima 50」よりも本作の方が、当時大多数の一般市民が報道で目にしていた景色に近いね。
基本的には当時報道・想定されていた内容の復習の域を出ないけど、そういった記憶も風化していく中で、世代を跨いだ教材としても活用し得る情報量は備えていると思う。原発自体の是非についても、結論をボカした匂わせ程度ではあるけど触れられているし。
「Why 原発?」に絡む話は本作で描かれた東日本大震災の情報だけじゃなくて、近年話題になった福井県高浜原発に絡む関西電力 – 高浜町元助役の金品授受問題も併せて履修しておくと、色々と闇の深い背景が見えてくるね、、、
先にも述べた原発内部中心の「Fukushima 50」や、頭空っぽアクションスリラーの皮を被りつつ原発の後ろめたい部分を突きつけた「天空の蜂」などと併せて鑑賞すると、事故や原発の全体像と現場の壮絶さ、原発の扱いにくさを共に理解出来てバランスが良いね。
以上。
ほな、また。
コメント
[…] 同じ原発事故をある程度俯瞰的に復習出来る映画「太陽の蓋」や、頭カラっぽスリラーの皮を被って原発の後ろめたい部分を突きつけた「天空の蜂」などと併せて鑑賞すると、事故や原 […]